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「韓国卓球」強さの秘密(3) 選手もコーチもすべてプロフェッショナル

21  今回、韓国を取材するにあたり協力してくれたのは大韓卓球協会で国際理事を長い間務め、ITTF理事、アジア卓球連合競技委員長をしている朴道天さん。朴さんは日本について理解が深く、今回の取材に対し、快く承諾してくれた。

 まず、朴さんに疑問を投げかけたのは韓国卓球界のシステムについて。登録人数、卓球人口から話を切り出した。するとあまりにも驚く答えが返ってきた。

「韓国は、卓球人口は少ないです。選手として登録しているのは約2500名くらいです。小学生、中学生、高校生が約1500人から2000人くらい、そのほか大学、実業団の選手で合せて2500名くらいだと思います。一般のママさんとか、趣味でしている人は約50万人位を予想していますが…。日本ではみんなが登録しますが、韓国は小学生から実業団までプロフェッショナルな選手だけが登録します」

 登録者=競技者

 それもここでいう競技者とはかなりの意識で卓球に取り組んでいる人を指している。

 日本の状況であてはめてみると、ちょうど各カテゴリーで全国大会に出場しているくらいの人数だろうか。

 登録人口が少ない理由に、強化指定校があげられる。韓国の中学校、高校では、どの学校にも卓球部があるわけではない。学校によって力を入れる種目が異なり、卓球に力を入れている学校が限られているという。

「小学校までは普通ですが、中学を選ぶ時に卓球がしたければ、卓球部がある学校を選びます。高校も同じです。それは学校側もスカウトしますし、選手本人も希望して選んで中学校、高校を決めます。一種の教育政策です」

 これも日本であてはめれば、卓球に力を入れている私立中学、高校のようなものだろうか。ただ、韓国では私立だけでなく公立校でもそういう学校はたくさんあるそうだ。

22 「自分の目標が勉強なのか、卓球なのか、そのほかなのか。子供と親が卓球を選ぶのであれば、専門の学校に入ります。日本の場合は学校生活の中で自分の特技を見つけていくが、韓国の場合は自分の目標をもっと意識してその道を選びます」

 このあたりは中国にも似ているところがある。

「強い選手になることが目標なら専門的な道を歩むこと。日本は全面的な教育が主だと思いますけど、韓国とか中国は専門的なシステムを持ってその道を歩きます。小さい頃から意識が違います。もちろん練習や環境が違います」

日本でも中学校から優秀な選手は有数の私立校からスカウトされたり、また、本人が希望していくケースが多い。もちろん、強くなりたいからその学校を選ぶのだろうが、韓国ではその時点ですでにさらにプロ的な意識が選手にあるようだ。この差はかなり大きい。

 韓国の優秀な子どもたちが卓球の道を選ぶのにもいくつか理由がある。その一つは、現役のオリンピックチャンピオンがいることだ。卓球ならチャンピオンになれる可能性があると考えるのは自然の流れである。

23 「日本の指導者からいつでも聞かれます。韓国は規模は小さいし、国力、経済でも全部日本の方が上です。体力的にも韓国と日本はそう変わりありませんね。違うのは、日本は一般的な道を通るのに比べ、韓国は専門的な道を歩く。その差が、最後には大きな差になるのだろうと思います」

 しかし、スポーツでそういった特別な道を歩む割合は全体の1〜2%くらいだと思うと朴氏は話す。普通の学校で普通に勉強するのが一般的であり、ある特別な道に進むことはある意味特殊なようだ。

「スポーツをする人は少ないと思います。数少ない中からその道を選んだ人は、プロフェッショナルな道を歩みます。まさにその道のエリートと言っていいでしょう。いいチームに入ることは将来の成功に結びつきますが、名門校に入るのはやはり難しい。そこでまず競争があります」

24  今回、朴氏に案内していただいたのはソウル女子。中高一貫で卓球に力を入れている名門校だ。高校生6名、中学生5名が将来の韓国代表を目指して毎日厳しい訓練を積んでいる。

 驚くのは、韓国のコーチは卓球専門という点。つまり、学校の先生が監督ではなく、その学校で卓球専門のコーチを雇っている。

「韓国は中学、高校と専門コーチが教えています。コーチは卓球だけが仕事です。各競技そうです。つまり、プロコーチがたくさんいるということです。コーチは学校の成績が上がれば評価され、生活がかかっているので一生懸命です」

 韓国には約1,000名のプロコーチがいるという。この点が日本とは大きく違うところだ。日本では名門と呼ばれる学校でも先生はあくまで先生が本職。卓球だけを教えて収入が得られるという人は数少ない。

 今回、韓国を取材してみて感じたことは、一言で言うと、韓国の卓球に携わる人は選手もコーチもすべてプロフェッショナルということだ。より専門的で、常に高い意識で毎日を送っている。そして、実業団チームを頂点とし、しっかりとしたピラミッドがシステム的にできあがっている。

「日本は、昔強かったし、韓国は日本からいろいろ学びました。だが、韓国は80年代からチャンピオンを育てています。今、日本は将来を見て、ジュニアに投資をしていますので、日本も約5年から10年以内に強くなると思います。

ただ、日本は裕福です。民主主義では人がやりたいことができる。これはいいことですが、経済力があがると個人的な生活がなんでもでき、趣味も多くなる。つまり、ハングリー精神がなくなります。韓国はちょうど中国と日本の中間くらいでしょうか」

 朴氏は、日本は経済が発展し、裕福になり、選択肢が多くなったため、ハングリー精神が欠如していると分析している。

 

 だが、日本の男子が9月に行われたアジア選手権大会で世界2位の韓国を破った。これは日本にとって大きな意味を持つ。ジュニアから育成してきた選手が世界の舞台で対等に戦える力を着実に備えてきた証拠だ。

 しかしながら、日本は中国や韓国、そして欧州諸国の卓球に対する取り組み方をあらためて学ぶ必要があるように思う。かつて、日本が世界に君臨していた時代、それらの国が一生懸命、日本から学んだように…。