無名のアスリート 越崎 歩(1) 「選考会で優勝しアジア選手権日本代表をつかむ」
中国電力で活躍するといえば、福岡春菜が有名。2006年の世界団体で福原、金沢らと共に日本の3位入賞、銅メダル獲得に大きく貢献している。
その中国電力でひときわアグレッシヴなプレーをする選手がいる。
「越崎歩」だ。
今年度のNT(ナショナルチーム)候補選手として、各ITTFプロツアーに出場している。4月に行われた日本リーグビッグトーナメントで福原愛を破り、そのすぐあとに遠征したチリオープンで、その前週にブラジルオープンで2位となった福原を再び破った。
そして、7月に行われたアジア選手権大会選考会にて見事1位となり、自らの手で代表権を獲得。世界ランキングも二桁の95位まであがり、いま、もっとも勢いのある選手である。
越崎の戦型は、カット型。つまり一般的には守備型であるが、どの位置からでも攻撃に転じ、積極的に攻めたてるのが特徴である。
トーナメント戦とは違い、選考会は1次リーグ、決勝リーグという具合でリーグ形式で行う場合がほとんどである。つまり、ほぼ全員と対戦するため、運によって左右されづらい。逆に言うと本当に実力がなければ、選考会で1位にはなれないのだ。
しかも、カット型は戦型的にもリーグ戦で上位に食い込むことは極めて困難である。なぜなら、攻撃選手の倍の動きを何試合もこなさなければいけない。また、カットには強いという選手が必ずいて、そこを乗り切ることが難しいからである。
今回は、小西、田勢、梅村といった選手を3−2の接戦で破ったのが大きい。また、藤井、樋浦、岸田、伊藤といった強豪をストレートで破ったのも見事だ。
実際にここ数年、こういった選考会でカット型の選手が代表(1位)になったという記憶はない。選考会での優勝は、越崎が大きな地力をつけたことを意味している。
そして、これはまさに“特筆すべき出来事”なのである。
「最終戦のまえの小西さんに勝ったら決定というのを試合が終わり勝った時に言われました。それで、えっ、て驚きました。本当に。私は知らなかったです。ほかの人は計算していたかもしれないですけど、私はそこまで気が回らない。人かどうこうではなく、とりあえず自分が頑張って勝たなきゃって…。逆に聞いていた方が、勝ったらいけると考えた方が、たぶん変に堅くなったと思います」と振り返る。1位になろうとかじゃなく、一戦一戦全力で勝てるようにという感じでプレーしたと言う。
中国電力の橋本大二監督は、「名前の如く、歩というか、一歩ずつ前に進んできてチャンスをもらったことによって今回は成果として出た。本当にコツコツやってきたことが実りあるものになってきたのではないかなと思う。まあ、頑張り屋さんですよ」と越崎のことを誉める。
「ただ、日本代表になったけど、代表として行くからにはこれからが大変。これで満足することはないし、日本のために頑張らなければいけないし、自分のために頑張らなければいけない」とつけ加え、本番での活躍を期待する。
アジア選手権大会は9月17日から23日まで中国の揚州で開催される。越崎は団体とシングルスにエントリーされている。
「プロツアーには結構ださせてもらっているが、ちゃんとした日本代表は初めてなので、雰囲気とか、いきなり目標という前に、もう少し自分で自信をつけなければ自分のプレーができないと思う。勝ちたいし、勝たなければいけないけど、とりあえず自分のプレーをするために、技術的には全部レベルアップしなければいけない。強い相手に対し、自分のプレーができない時でも対応できるようにしたい」と日本代表として自分がすべきことを見据え、抱負を語った。
本番までは約2週間。代表メンバーは事前合宿を経て本番を迎える。
アジア選手権では、“日本の越崎ここにあり”と各国にインパクトを与えるようなプレーを期待する。
さて、脚光を浴びつつある越崎選手だが、実は高校時代までは無名の選手だった。なぜ、無名の越崎選手が日本代表にまで登りつめることができたのだろうか。
次回は、このあたりを探ってみたい。
