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『十六銀行』A 全員が正社員

20  十六銀行の卓球部は、恵まれている点がいくつかある。

 

 練習は9時から5時半くらいまでが規定時間だが、規定時間が終わっても自主練習をする選手が多い。水曜日と土曜日は午前中の半日で日曜日は基本的には休み。

 つまり、競技生活をおくっている限り、仕事として卓球だけに打ち込むことができる。女子日本リーグの1部チームは、このようなシステムになっているチームが多い。卓球を極めたいと思っている選手にとってはとてもありがたいことである。

ただ、十六銀行が他と違うところは、いわゆる契約社員ではなく、この条件で全員が正社員であるということ。競技生活に区切りをつけた選手は、本人が希望すればすぐに会社の仕事に復帰できるという。実際に何人ものOG選手たちが現在も在籍している。今まで仕事をしていない分、多少のハンディはあるかもしれないが、それよりも卓球で鍛えた精神でバリバリと仕事をこなし、社内での評価も高いようである。

 選手は、既婚者以外は全員会社の独身寮で生活する。朝晩の食事は寮母さんが作ってくれるので栄養が偏る心配もない。専用練習場まで自転車で15分ほどなので通勤も便利だ。

 十六銀行の良さを選手に聞くと全員が口をそろえて「環境の良さ」をあげた。これは、練習場や寮などのハード面はもちろんのこと、待遇面、卓球部に対する会社の理解度などのソフト面を加味した環境であることは言うまでもない。

 現在、十六銀行には6名の選手がいる。

田勢美貴江が結婚して東京登録になったため、今年から潮ア由香が主将をつとめている。もう一人のミセス、西飯由香と新人の朱夢軍が主力メンバー。希林(希は希に?)は選手兼トレーナーとして登録しているが実質上はトレーナーのみ。そして、今年高卒で入った鈴木美佳の6名だ。

 幅広い選手層だが、チームワークはいい。

22 最年少の鈴木は、高卒で不安の方が多かったと予想される。だが、「高卒でわからないことがいっぱいありますが、皆さんが優しくいろいろなことを教えてくれ、気を使ってくれるのでありがたいですし、普段も仲がよく、楽しく接してくれます。ただ、練習では普段と違う緊張感がありそれだけ意識が違うんだなと思います」とすっかりチームに溶け込んでいる。

 新人の朱夢軍は、「監督、コーチ、トレーナーがサポートしてくれるし、卓球だけのことを考えればあとのことはやってくれる。安心感があります。みんなのレベルも意識も高いが、家族みたいで楽しい。このチームも一員になれて幸せと感じました」と話す。学生選抜で2位の実績ながら昨年は声がかからなかった。だが、彼女の卓球に対する想いが届き、晴れて十六銀行の一員となれた。この想いを忘れないでほしいと思う。

23  トレーナーとして選手をサポートする希林は、「普段の練習で選手にとって質の高い練習をさせたいのはもちろんですが、試合の時や普段でも、みんなが困った時などに選手の立場でも悩みなどサポートできればいいなと。自分ができる限りサポートしてあげたいと思っています」と話す。

 コーチや監督にわざわざ相談できないといった簡単な問題は、意外と多くある。そんな時、希林の存在が大きいと主将の潮アは力説する。

「コーチに相談するほどの悩みではないことを希さんがアドバイスしてくれると安心できます。ちょっとした事を相談できる。大丈夫だよと言ってくれるとホッとするんです」と。

 今年から主将となった潮ア由香は、「3年間、いろいろな意味で大人になったと思います。1年目は新しいことを教えてもらって毎日が新鮮というかいろいろなことを覚えていくのが楽しかった。2年目からは自分でどう取り入れていくか、自分でやることに戸惑った時もありましたが3年目くらいから慣れてきて、今はすっかりこの環境に慣れてきたという感じです」と選手として、また、人間としての成長を実感しているようだ。

21  最年長の西飯は、昨年、腱勝苑から移籍した。女子卓球界ではベテランだが、十六銀行では2年目である。

「今の実力を維持するというよりも今よりももっと強くなってほしいという河田さんの言葉にひかれました。十六銀行に入った根本的なことは今よりも強くなりたいっていう思い。そこはくじけずに取り組んでいきたい。ここは自分が悔いなくやれる場所です」

 選手の競技生活が伸びているとはいえ、既婚者の西飯にとっては一年一年が勝負となる。世界代表の経験もあり、全日本のダブルス3回、ミックス3回の優勝経験を持つ西飯にとって、団体での優勝とシングルスの優勝こそが集大成となる。

 在籍が一番長い田勢美貴江は新婚さんだ。旦那さんはご存じ、協和発酵の田勢邦史選手である。

「結婚して本当に信じられる人が常にそばにいてくれて、心の支えという部分が一番大きい存在ですかね。結婚したら勝てなくなるという人が多いし、もし負けたら結婚したからだと言われそうですが、私はそうじゃないなと思っています。逆に結婚して心を支えてくれる人がいるから頑張れるので、結婚してよかったと思っています」

 女性の競技生活は卓球界でもかなり伸びている。そこで浮上してくるのが結婚という卓球よりも大事な問題だ。女性の場合、家庭の仕事が増える分、二足のわらじは困難かもしれない。だが、理解ある旦那さんがいればそれも半減するはず。

人によって考え方は違うだろうが、卓球界でも既婚のプレーヤー、さらにママさんの現役プレーヤーが今後は増えていくような気はしている。そういう意味では西飯、田勢の両選手はその良い模範となっている。女性ならではの悩みを相談されることも多いのかもしれない。

 さて、このメンバーで十六銀行はいよいよ全日本実業団の3連覇に挑戦する。3連覇はあの日本生命でさえも達成していない連覇記録となる。果たして達成することができるか注目したい。