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「日本生命」強さの秘密(3)(自主性と意識の高さ)

32_1  日本生命の練習スケジュールは、9時15分から1745分まで。午前約2時間半、午後約2時間半なので極端に多いというわけではない。しかも週に2回くらい午前中の休みがあり、完全休日もある。だが、各々の選手に練習相手がつくので、練習時間は100%自分の時間として使えることが最大の利点だろう。有効的に時間を使い、集中した練習と積極的休養のバランスがとれている。

33_1 一コマは45分練習、15分休憩。休憩中には練習では決してみせない笑顔をのぞかせる。まさに「緊張とリラックス」が調和している。

 もちろん、24時間いつでも使える練習場なので、規定練習が終わってからもほとんどの選手が残って自主的に練習を行っているようだ。抜群の環境を誇る日本生命の選手は、その環境に甘えたり、妥協したりはしていない。

この「自主性」にこそ日本生命の強さの秘密が隠されている。

 練習の内容は、選手が自分自身で考える。なぜなら、試合では自分が考え、自分が戦うからだ。

17年間の中で指導はいろいろ変わってきました。今は自立している選手が多いから細かいことを言う必要はありません。いい環境、いい練習ができる状況を作り出すことが僕の仕事だと思っています。では、自分がどう選手に接しているかというと、細かなことを言わず自分で考えさせます。それは技術のことも自己管理にしてもすべてそうです。なぜかというと、卓球は、試合ではすべて自分で考えなければいけないわけです。ベンチコーチのアドバイスは多少ありますけど、相手の状況は一本ごとに刻々と変わってくる。それに対して自分で情報収集して判断して実行するというのが卓球の特色ですね。それを行うためには常日頃から自分で全部考えて、決断して行動するという習慣をつけなければいけない。それが一番大事だと思っていますから、そうできるように外で見守っているというのが僕のポリシーです」と村上監督は話す。

もちろん、試合が終わったあとなどは選手と一緒に方向性などを考える。しかし、方向性が決まればあとは選手が自分で考え、自分で実行していく。監督は、選手の要望する練習相手を用意するだけで、練習中はほとんどボール拾いをしている。

「日本で一番ボールを拾う監督じゃないですか()。でも、ボール拾いをしないと選手がケガをしてしまう。以前、ボールを踏んでケガをした選手がいましたからボールを拾わないと危ないんです」

 指導者というものは自分の考えや方針などを選手に押しつけてしまいがちなのかもしれない。もちろん、対象年齢によってその指導法は変わってくる。高校生くらいまではやはり、指導者がグイグイと引っ張った方が選手は伸びるだろう。しかし、教えられすぎや指示待ちの選手が多いことも確かである。判断力や決断力に欠け、言われたことはできても自分で考えて行動することに乏しくなる。大学生や社会人になって、これからっていう時に伸び悩む選手が多いが、最終的に自立できなければ結局、大成はできない。このあたりが指導の一番難しいところでもあるといえよう。

 日本生命は日本一のチームである。そこに入る選手は当然入った時から意識が高いからこそできるのかもしれない。この点について選手は口をそろえる。

「個人個人で、自分で自覚を持って普段から厳しい練習をしている」(岸田)

「一人ひとりが自立して世界を目指そうという雰囲気になっている」(藤井)

「ニッセイの良さはたくさんあるが、特に自主性を大切にしているところ」(田中)

31_1  ところで、監督のポリシーは選手に伝わっているのだろうか?

「監督は、選手が嫌がることはまずしません。私たちがやりたいようにしようといつも考えてくれて、こちらからやりたいとこなどを提案したら、大体がいいぞ、やれやれっていってくれます。結構自由にさせてくれるというか、社会人なので先生と生徒という関係ではないですよね。私たちも「監督」ではなく「村上さん」という呼び方なのですが、もちろん会社の組織ではあるので監督は私たちの上司ではありますが、最後の責任は俺が取るから、とたぶん思ってくださってくれていると思います。普段からこれやれ、あれやれという指示はないです。自主的に自分でやっていって、何か問題があった時や、新しいことをやりたい時はもちろん相談しますけど、相談相手?見たいな感じですかね()とキャプテンの岸田はさすがに理解しているようだ。

 世界代表の藤井はニッセイに入った時、最初は戸惑ったと言う。「大学までは監督が後ろにいて、ああだこうだと言われたり、練習も自分でやっていてもやらされている部分は少なからずあったと思うんです。だけど、ニッセイに入ってきて、野放しではないですけど何でもやっていいよっていう感じで、自分で厳しくするのって難しいことだと思いました。どこか甘えが出たり、今日は怠けたいなと思う時もある。でもここで2年間やらせていただいて、少しずつですけど自立できたりとか、自分に少しずつ厳しくできたりとか、そういうことが少しずつ身についてきて自分ひとりで卓球ができるというか、試合でも自信を持ってでき始めてきたかなっていう感じです。監督は大変だと思います。いいたいこともあるだろうけども選手の成長を思って何が選手にとって何が選手にとって一番必要なのか考えて下さっているのかなって思います」

 選手も監督の考えをよく理解しているようだ。

 ただし、村上監督自身、最初から今のような指導方針でやっていたわけではない。

17年間ずっとこうだったわけではありません。最初は高卒が多かったし、自分も一緒に練習して、ああせえこうせえ、とそういう時代はありましたよ」

 17年間の様々な指導経験から現在のやり方に達しているのである。

 さて、日本一の日本生命。普段からどこに目標を置き、何を目指しているのだろうか?

 次回はそのあたりの話をお伝えしよう。